起業者、新規事業の立ち上げを検討中の方には必見!! ビジネスに必要な「デザイン思考」とは何か?
ビジネスパーソンの皆さんは、仕事の現場で「デザイン思考」「Design thinking(デザインシンキング)」という言葉を耳にする機会が増えたのではないでしょうか。
「デザインって、思考じゃなくて行動じゃないの?」 「デザインはデザイナーの仕事でしょ?」
こんな風に考える人が多いのではないかと思います。
世間一般的には、デザイナーというとファッションデザイナーやグラフィックデザイナーを想像しますし、デザイン=表層的な装飾、というイメージが根付いています。
ですが本来、Design/デザインという言葉は「設計」と訳す事ができます。 設計とは、順序立てたプロセスに沿って何かを製作することなので、デザインが持つ装飾的な意味合いとは違うのではないか、と感じるかもしれません。
しかしデザイン思考は、まさに設計の意味に近いアプローチの方法なのです。
そして、今やビジネスの現場で、デザイナー以外のビジネス職の人の間でこの言葉が囁かれているように、デザイン思考は、全てのビジネスパーソンが理解して、実践できる必要があります。何故でしょうか?
本記事では、デザイン思考について初めて勉強する人や、非デザイナーのビジネス職の人のために、基礎的な知識についてイラストを交えてご紹介します。
目 次
4 まとめ
デザインの力でビジネス課題を解決したい未来の仲間へ
はじめに:デザイン思考とは?
デザイン思考(英: Design Thinking)とは、デザインに必要な思考方法と手法を利用して、ビジネス上の問題を解決するための考え方です。
世界的に有名なデザインファームであるIDEOの創始者、ティム・ブラウンは、デザイン思考では革新的な課題の解決策にたどり着くために、デザイナーが使うさまざまなツールを活用すると述べています。 (参考:IDEOU, Design Thinking: A Method for Creative Problem Solving)
デザインに必要な考え方や手法が、なぜデザイナー以外に必要とされるのでしょうか。ここに「デザイン思考」という言葉がビジネスの現場で囁かれている理由が隠れていそうです。
デザイン思考はなぜ必要なのか
20年前のビジネス
私たちの身の回りには携帯電話はおろか、パソコンすら普及していませんでした。「こんなことができたらな」「こんなものがあればいいな」と、いつも未来に憧れを抱いていました。
未来を感じさせるものは何だって欲しかった。新しいモノが出てくる度に、心を踊らせていました。多少使い勝手が悪くても、新鮮に感じるモノならそれだけで満足でした。
現代に求められるビジネス
技術は進化して、人工知能がチェスで人間を負かすような時代。 私たちは、スマートフォンとお金さえあれば、望むことは大抵叶えられるようになりました。
技術の進化で、私たちのニーズは簡単に満たされる様になりました。 そして人は、あふれるほど提供されるモノの中から、欲しいモノだけを選び取るようになりました。
つい20年前までは、私たちは新しいモノやサービスに寛容でした。それは知らない世界をもっと覗きたくて、未来に近づきたかったからです。
しかし今の私たちは、夢物語でしかなかったはずの未来を、スマートフォンという形で手に入れました。受動的だった行動が、能動的に変わり始めたのです。 今では新しいモノに対して懐疑的で、少しでも使いにくい製品には見向きもしません。
つまり過去のビジネスは、一度モノを作ってしまえばそれで終わり。何もせずともユーザーがついてきました。
しかし、便利な現代でビジネスをするには、モノが誰の手に渡って欲しいか考える必要が出てきました。
更にユーザーは自由に動き回りますから、しっかり狙いを定める必要もあります。
現代でモノを売るために必要な視点
ユーザーにモノを届けるためには、具体的にどんなことを考える必要があるのか?それは以下の5つだと言えます。
誰にボールを投げるのか
どんなボールが欲しいのか
どんなボールを作るか
どんな色・形で、どう投げるか
ボールを拾ってもらえるのか
このように、ユーザーの視点に立ってユーザーのことを考えなければ、モノは届かない、売れない時代となったのです。
©Goodpatch Inc.
会社目線で「モノ」を作って終わり、という時代は過去となりました。現代は、ユーザーの視点に立ち、モノだけではなく「コト」=体験を作る時代なのです。
つまり、現代のビジネスにおいて、ユーザーの体験を作る視点・手法が、デザイン思考を構成しているのです。
デザイン思考を構成するマインドとプロセス
デザイン思考とは、ユーザー視点のマインドと、5つの問題解決手法の掛けあわせによって構成されていることがわかりました。
続いて、デザイン思考を支えるマインドとプロセスを具体的にご紹介します。
マインド
常にユーザー視点
新規事業を立ち上げるなど、何かを考えるとき、利益や売上というビジネス視点のメリットだけで動く事はありませんか? デザイン思考は、「ユーザーが本当に悩んでいることは何か」「どのように解決するか」「なぜ必要なのか」「ユーザーが価値を感じるポイントはどこか」など、常にユーザー視点でプロセスを進めます。ユーザー視点の定性的な要素と、ビジネス観点の要素が揃って初めて、その事業・サービスには価値があると言えます。必ずユーザー視点で考えるようにしましょう。
共創する・コミュニケーションを重視する
チームメンバーやユーザーなど、人同士のコミュニケーションを活発にしながら進めましょう。アウトプットのクオリティはコミュニケーション量に比例する、と言われています。些細な議論もオープンに交わすことで、フラットに意見しやすい環境の構築が必要です。
特に、プロジェクト進行・マネジメントを担当する人は、チーム間の話し合いで意思決定を効率化し、素早いアウトプットに繋げられるように心がけましょう。
プロトタイピング(まず作ってみる)
最初から完璧な状態のモノを差し出す必要はありません。答えを知っているのはチームメンバーではなく、ユーザーです。 そのため、早い段階で試作品・プロトタイプを作り、ユーザーに触ってもらうことが重要です。検証・改善を繰り返すことで、最終的にユーザビリティーの高いアウトプットを出す事ができます。
プロトタイピング 検証・改善を重ねて最終的に優れたプロダクトに近づけていく手法がプロトタイピングです。チームの共通言語を作りながら、低コストで早い段階から価値の検証をすることができます。
1つのアイデアに縛られない
初期の段階からアイデアを固めすぎてしまうと柔軟性が失われます。ユーザーの行動や要望は時代と共に移るので、ビジネスサイドは常に多様性のあるアイデアを持つ必要があります。まずは多種多様なアイデアを発散し、仮説検証によって徐々に収束させればよいのです。
アイデア発散には「ブレスト」 アイデアを発散する際に使える手法がブレストです。複数人で行うので、様々な視点のアイデアを効率的に集められます。しかし、ブレストを行う目的が認識として揃っていないと、価値のあるブレストにはなりません。具体的な進め方をこちらの記事でご紹介します。
プロセス
1. 観察/共感
まずはターゲットを観察し、ターゲットの事を理解します。ここで大事なことは、マインドにもある常にユーザー視点を持つこと。ターゲットの目線で考えることで、背景や課題が見えてきます。具体的にはユーザーインタビューやユーザーテストを繰り返し、コンセプトやアイデアの精度を上げていきましょう。
ユーザーインタビュー
観察/共感のフェーズにおいて、ユーザーの潜在的なニーズを見つけるために有効な手段がユーザーインタビュー。ユーザー中心のデザインをするためにもインタビューは非常に重要です。しかしユーザーインタビューは、ただ話を聞くだけではなく、相手も自覚していない課題を対話から引き出す事が求められます。解決するべき課題をしっかり特定するためにも、事前準備を怠らないようにしましょう。
2. 問題定義
ユーザーインタビューなどで観察を行うことで、「ターゲットが困っていること」、「なぜ困っているか」が明確になります。このフェーズでは、さらに掘り下げた観察と問題定義を繰り返しながら、コアとなる問題を見つけ出しましょう。場合によっては「そもそも観察対象が違うのではないか?」といった、根本的な軌道修正が求められる場合もあります。
固まりかけている仮説を壊すことは勇気がいりますが、すべてはユーザーへ優れた体験を提供するためです。チームメンバー全員の認識がぶれないように、最終的な形をゴールやコンセプトという形で定義しましょう。以下の記事では、課題の特定と理想の定義についてわかりやすく解説しています。
3. アイデア創出
どんなアイデアがユーザーに受け入れられるか、思いつく限りのアイデアを発散しましょう。現実性は加味せず、とにかく発散することが重要です。この後のプロトタイピング、検証で、徐々にコアの問題解決になるアイデアが見つかります。
発散したアイデアを決定および検証する際は、仮説をより具体的にする事が大切です。
どのような条件で、ユーザーがどのような行動をとるか、がそれぞれ具体化できていると良いと思います。
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4. プロトタイピング
アイデアが出たら、検証するためにすぐにプロトタイプを作成しましょう。実際にプロトタイプを作成することで、アイデアがより具現化でき、イメージが湧きやすくなります。
プロトタイピングツールを使えば、口頭では伝えきれないアイデアを再現できるので、ユーザーテストや、提案プレゼンの際に説得力が増します。結果的に裁量がある上長の承認をもらいやすくなり、プロダクトづくりにおける意思決定がスムーズになります。また、プロトタイプを作成することで、開発メンバーが技術的な実現可能性をはかることができます。
5. 検証
プロトタイプが出来たらそれで終わりではありません。ここからターゲットに向けて検証・改善を繰り返し、試行錯誤しながら、最終的にクオリティの高いアウトプットを目指します。
検証すべき項目が増えてきてしまった時は、仮説に優先順位をつけることが重要です。検証のタイミングは一度きりではないので、優先度が高いものから低いものまでバランスよく分類し、検証・改善のサイクルを小さく早く回すことで、精度が高まります。
まとめ
冒頭で説明したデザイン思考をもう1度振り返ってみましょう。
【デザイン思考とは】 デザインに必要な考え方と手法を利用して、ビジネス上の問題を解決する方法 |
デザイン思考はデザイナーだけの考え方ではなく、ビジネスに携わる全ての人に関係する考え方です。
プロダクトを作る以外にも、プロジェクト進行や、組織課題を考える時など、あらゆる場面でデザイン思考が活用できます。デザイン思考は、既存のやり方では生まれない革新的なアウトプット、イノベーションに繋がっています。
デザイン思考についてのおすすめ資料
最後に、デザイン思考に関してわかりやすく説明されている資料をいくつかご紹介します。
著者のティム・ブラウンは、デザイン思考を初めて提唱したデザインコンサルティングファーム IDEOのCEOです。本記事でも繰り返し紹介した、ユーザー視点がどのようにプロダクトに活かされたのか、事例をベースに学ぶ事ができます。体験をデザインするとはどういう事なのか、彼の言葉に触れて考えられる内容です。
終わりに
現代でインパクトを残すビジネスを作るためには、時には誰も気づかないような価値を洞察し、深掘り、ユーザーにとって価値あるサービスにしていくことが大切です。そんなデザイン思考は、デザイナーだけのものではなく、ビジネスパーソンが活用するべきツールなのです。
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